自然栽培をやられている著者"岡本よりたか" さんの本。
彼は、無農薬、無肥料、無除草剤、自家採取をキーワードに自然栽培という方法で農業をやられている。
農業にもいろいろな種類、方法があるらしい。
一般的なものは農薬や化学肥料などを使った慣行栽培というもの。
スーパーなどで見かける野菜の大部分はそれであろう。
また、最近ではよく知られるようになった有機栽培。
これは慣行栽培とは対照的に農薬などを使わずに、有機物の力を借りて野菜を育てるというもの。
一部、有機栽培でも使用出来る農薬や化学肥料があるらしいのだが、そのへんの細かいことは割愛。
そして、自然栽培。
有機栽培よりも名前の通りもっと"自然"に近いかたちでの栽培方法らしい。
森などの自然に近い状態を畑につくり出し、野菜や土の本来の力を最大限に発揮させて野菜を育てていくというもの。
ざっくりと分けると、農業の栽培方法はこんな感じなのだろうか。
もちろん、慣行栽培でも減農薬というジャンルがあったり、有機栽培でも農薬を使用して育てられた苗を苗屋から購入する農家もいたり、自然栽培はいろいろな流派のようなものがあったりと、その世界はかなり奥が深そうだが…。
■肥料をやるから「根が張らない」
今回、この本を読んで印象に残った言葉。
第4章に書かれている内容である。
自分なりに要約すると、
本来、野菜は土のなかに適度に存在する水分や栄養を吸収するために根をしっかり張って成長していくものらしい。
そして、元気な根が元気な野菜(ここでは人間が食べる部分の意。)を作る。
しかし、肥料を与えすぎた野菜は根をそんなに成長させなくても野菜が大きくなる。
理由は、作為的に与えた肥料が土の中にたくさんあるため、ちょっとの根でも充分な栄養を補うことができるから。
人間に例えるなら、体重70㎏の同じ人間でも、前者はがっちりしたアスリートタイプ。
定期的に体を鍛え、バランスのいい体型をしている。
反対に、後者は肥満タイプ。
運動はせず、おいしいものだけ贅沢に食べている生活。
足腰は弱いのに、お腹だけ発達してしまったような人。
そんな感じだろうか。
また、根が元気に張った植物は病気などにも強いらしい。
どうしても化学肥料などで育てた野菜などは病気などに弱く、それゆえ病気が出ないように農薬が必要になってくる。
このあたりは、東洋医学と西洋医学の考え方に近いものがあるかもしれない。
最近は、薬付けの体などが問題視されるときもあるが、野菜の世界もそうなのかもしれない。
医学と一緒で、現状ではどっちが正しいとかを結論づけることは難しいことだと思う。
そういう面では、消費者が自分はどんな野菜を食べたいかをしっかり考えていくことが今後はもっと大切になっていくだろう。
最終的に、個人が選ぶ時代。
これは野菜に限ったことではない。
消費活動において、今の日本のようにモノがあふれた時代、自分がどんな人からどんなモノを買うのかがとても重要。
日々なんとなく買う野菜ではあるが、そういう視点で野菜について考えるきっかけを与えてくれたこの本。
有機栽培や自然栽培に興味があるけど、いまいち良く分からないという方におすすめの本である。
スーパーで野菜を見るのが、すこし楽しくなるかもしれない。
スーパーで野菜を見るのが、すこし楽しくなるかもしれない。