ポートランドのひとつの特徴として、ローカルファーストが挙げられる。
なるべく地元の企業などを優先していこうという考え方だ。
それによって、世界中の都市が同質化するなかで、個性を出した街づくりが出来るという狙いがあるのだろう。
そういう背景もあり、この地域にはローカルな食品加工屋さんなどの存在が目立つ気がする。
その中でも有名な会社のひとつが、「WOODBLOCK CHOCOLATE」というチョコレート屋さんである。
ポートランドに行ったら、尋ねたいお店のひとつであった。
ポートランド滞在二日目、お店を訪れてみた。
事前の調べによると、オープンしているはずの時間帯なのになぜか閉まっている。
入り口付近でうろうろして、別の入り口などがないかしばらく探していた。
すると入り口からオーナーのダンディなおじさんが登場した。
「あいにく、今はリニューアル中なんだ」と、彼は言った。
一瞬、僕は残念な気持ちになった。
「でも、もしよければ見学していかないか? 中へどうぞ。」
そう言って、彼は親切にも招き入れてくれた。
建物の中はチョコレートのとてもいい香りが漂っていた。
リニューアルに向けてスタッフがチョコレートのパッケージングをしたり、カカオ豆を焙煎したりと、皆、一生懸命にそして楽しそうに働いているのが印象的だった。
オーナーはただの観光客の僕にいろいろな工程や味の説明をしてくれて、試食までも遠慮なくさせてくれた。
チョコレートが大好きなオーナーは僕以上に、ずっとつまみ食いをしていた。
チョコレート好きの少年が、そのまま大人になったようだ。
一時間ほどの即席の工場見学は終わった。
僕はお礼を伝え、帰ろうとした。
しかし、彼の親切はそれだけでは終わらなかった。
「次の日曜日にプレオープンイベントをやるから、是非来なよ。」と。
僕は嬉しくて「絶対、行きます。」と返答してその日は帰った。
そして、プレオープン当日。
わくわくしながら、お店へ向かう。
店内に入ると、チョコレート以外にもデニッシュやクッキーなど美味しそうな食べ物がたくさん並んでいた。
リニューアル前のお店がどんな様子だったかは分からないが、とても素敵な空間に仕上がっている。
そして、なによりゲストが皆楽しそうにいろいろな味を楽しんでいる。
でも、やはりここでも一番楽しそうにしているのはオーナーのような気がする。
そんな好きなことに情熱を注ぐ彼が作るチョコレートはおいしいに決まっていて、それはただ味だけではなく、この人のチョコレートを食べたいなと思わせてくれる何かがあるように感じた。
そんな素敵なチョコレート屋さんの話でした。
WOODBLOCK CHOCOLATEの商品はホールフーズマーケットなどでも買うことが出来るのだが、せっかくならこのお店に直接訪れて購入するのがおすすめ。
ちなみに、僕は塩味のチョコレートが気に入っている。