茨城県で有機農業をやられている久松達央氏の「小さくて強い農業をつくる」という本。
彼が経営する"久松農園"は、4haほどの畑で年間50品目以上の野菜を、7人のメンバーで作っている。
この本では、著者が大手企業を辞めて農業を始めた経緯、就農した当初のエピソード、
従業員を雇い成長していく過程、現在の農園の様子、今後の展望、
など過去、現在、未来という時間軸で彼の農園が成長していった記録が分かりやすく記されている。
新規就農に興味のある方にとっては、一人の成功者が進んできた道をかなり深くまで知ることが出来るのでおすすめである。
■第三章 言葉で耕し、言葉で蒔く。チームで動く久松農園の毎日
個人的に、一番興味深かった章。
有機農業と聞くと、どこか牧歌的な様子を想像してしまうことが多い。
そのイメージを見事にくつがえされた章だった。
年間のスケジュールに始まり、特に週間スケージュールへの落とし込みの緻密さには驚いた。
また、一つの作業(本ではキャベツ定植について)ごとに記録された手順書のようなものを作成することで、どのスタッフが作業に入っても同じように出来る仕組みづくりなども徹底している。
「センスとガッツ」がなかった著書だからこそ出来た、『言葉で耕し、言葉で蒔く』という徹底的に文字化すること。
まずは自分の理解を深め、彼は成長した。
そして、その努力が現在スタッフが増えたことによって、より活かされてきているのだろう。
そのほかの章もいろいろとおもしろい話が多い。
他の章では、啓発的な内容も散りばめられたていたり、人生の生き方などにも言及していたりと。
元来、口が達者だったという著者ならではの上手な文章を楽しむことが出来る。
いい意味で、農家らしからぬ、というやつだ。
有機農業+個人宅配などに憧れや興味があるかたは是非読んでみるとおもしろいだろう。